僕はマウンテンバイクに乗り始める前、長い間BMX(バイシクルモトクロス)に乗っていた。BMXに夢中だった僕には「マウンテンバイクはオジサンの乗り物」という認識があり、あんなの乗ってられないよ、というのが本音だった。
しかし、やがて僕の心も変化して、もっといろいろなことをやってみたいと思い始めたとき、BMX仲間から、マウンテンバイクのツーリングイベントがあるから一緒に行こうと誘われた。1985年のクリスマス前の日曜日だった。
BMXで、決められたコースを走り、ルールでレースすることに慣れていた僕にとって、マウンテンバイクのツーリンクはすごく新鮮だった。瞬時に変わっていく路面コンディション、ぬかるみもあれば、落ち葉が積もった心地よい道もある。周りの景色は目まぐるしく変化する。そして、心地よい風が体を包んでくれる。
初めて補助輪なしの自転車に乗れたときに感じた、「これさえあればどこへでも行ける!」という、世界が急にグンと広がっていくような感覚が、僕の身体に満ちた。マウンテンバイクってスゲエ!と、心から思った。
それ以来、僕はマウンテンバイクにドップリと浸かり、いろいろなテクニックをマスターし、さまざまな場所へ乗りに行ったが、そのパワーの源泉となるものがある。
それはイマジネーション、想像力だ。
想像力は創造力でもあり、自分次第でどこまでも広がるものだ。
たとえば僕は、こんなテクニックを自分がメイクする、というヴィジョンを頭の中で描く。それを心からやってみたいと思っていれば、できるようになるのだ。
もしキミが、これからマウンテンバイクに乗ってみたいのなら気持ちよくフィールドを走っているところを思い浮かべてごらんなさい。想像できたヴィジョンの実現を心から望んでいれば、それは必ず現実のものとなるから。
そう、イマジネーションは究極のフリーライディングなのだ。
この本は、他のマウンテンバイク入門書とはちょっと違う。僕の実体験を基にして、テクニックや知識を、頭で覚えるより心で覚えられるように作ったつもりだ。
だから難しいことはすべて後回し。何はさておきマウンテンバイクにまたがって、漕ぎ出してみてほしい。キミがまだ知らない、限りなく広がる世界が、きっとすぐに見えてくるから。
はじまりはおわらない。